「真夏の怪談話」         ’01年8月6日


ココット

 妻や娘に言われて、稲川淳二の「こわい話」シリーズのビデオを5本も借りて来てしまいました。
 この季節になるとテレビのバラエティ番組では「怖い話」の特集がしばしば見られるようになりますね。
 これまで私の家ではそういった番組はほとんど見ていなかったのですが、今年はどういうわけか妻と娘がたびたび見るようになっていたのです。
 ビデオを見て感じたことは、ドラマ仕立てになっているものよりも一人の話者が語るという形式のもののほうがずっと怖いということでした。
 とくに稲川淳二の語り口調が怪談には向いているように思いました。
 ドラマでは血液を飛び散らせたり、肉体を切り刻むなどの残虐なシーンをことさらに多くして怖がらせようとしますが、語りでは言葉によって恐怖感をかきたてなければなりません。
 江戸や明治の頃には噺家の人たちが四谷怪談とか牡丹灯籠といった怪談噺を夏場にしていたようです。

 「これを見ると、夜怖くて眠れなくなる」と、ビデオの初めにナレーションがはいっていました。
 たしかに話を聞いていると、ザワザワと鳥肌が立つことが何度もありました。
 しんと静まりかえった部屋に稲川淳二のボソボソした声と一緒に「クースーピー、クースーピー」と寝息が響いていました。
 妻が座っているざぶとんのすみにモコが割り込んで寝ていたのです。
 娘の久美子のわきではしし丸が横になっていました。
 そして、「怖くて眠れなくなる」というビデオを見ている途中で、妻と娘もぐっすりと眠りこんでいました。
 稲川淳二の語り口調が耳に心地良いらしくて、次の日に別のビデオを見ている時にもやはり妻と娘はモコたちと一緒に熟睡していました。
 私はと言えば、最後まで見ていましたが、怖いというよりも稲川淳二の語り口のうまさに感心するばかりでした。

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